[辛口&自戒コラム]どうして業務が回らないのか?
#総論・概論#経営管理#業務効率化業務を効率化するために業務フローを見直したり、システムを刷新、あるいは新規に導入したが一向に改善せず、思うように業務が回らない…といった声をよく聞きます。業務効率化のフレームワーク、便利なITシステム・サービスが世に多く溢れるこの時代に、なぜ多くの企業で業務が回らないという問題が起きているのでしょうか? 今回は自戒の念も込めて、多くの企業が抱える「業務が回らない」問題に対し、筆者なりの本質的な問いや答えを説明していきます。はじめに結論を申し上げ、その後読者の皆様に何点か問いかける形式で書き綴っております。内容によってはやや辛辣な表現もあるかと思いますが、ご一読いただけますと幸いです。
目次
当然の結論‐マネジメント次第で業務は回る、回せるに決まっている
会社の経営も現場の業務も、全てはマネジメント次第であるという、ある意味当たり前の結論を先に申し上げておきます。どんなに優秀なスタッフ・担当者が揃っていても基本的に彼らに決裁権限はなく、 意思決定をする側の管理職や経営層の意識・思考がお粗末では業務が回るはずもありません。逆にスタッフ・担当者が優秀ではなくその数も不足している場合でも、管理職や経営層の意識・思考次第で業務は回りますし、 更に言えば環境に適応しようと祖業・現業を捨ててでもビジネスモデルそのものを変革することに躊躇しない人間がマネジメント層にいる会社は持続的な成長を遂げる可能性が高いといえます。 当社のようなクラウドERPベンダーを例に取ると、クラウドERPという市場は現時点においては成長性の観点から魅力ですが、中長期的にはクラウドERPにとって代わる新しい技術・サービスが登場し、もはやクラウドやERPという概念が古く、 プロダクトが陳腐化する時期がいずれは到来するでしょう。そうなることを見越して、開発体制を適正化し、これまでのERPの枠には当てはまらない機能・サービスを充実させ、顧客に新たな価値を効果的に訴求・提供し続けなければ生き残ることは難しいということです。
辛口な問い① 人手不足、スキル不足を「免罪符」にして思考が停止していないか?
業務が回らない理由として、人手不足やスキル不足を挙げる管理職や経営層の方が多く見受けられます。確かに、対応してくれるスタッフ・担当者の数が不足していたり、数は充足していても個々人のスキルが追い付いていないのであれば業務を効率よく回していくことは困難でしょう。一方で、反証するわけではないですが、人手不足やスキル不足に悩まされながらも、工夫を凝らし業務を効率よく回せているケースが現実に多く存在します。「中小企業白書」「小規模企業白書」を読もう!にて紹介した事例はまさにそのケースです。業種・業態・規模、個社の事情に依ることは言うまでもないですが、人手不足やスキル不足という共通の課題・問題を抱えているにもかかわらず、業務を回せているか回せていないかという差はどこから生まれてくるのか?を突き詰めることは重要です。「人手不足やスキル不足だから業務を回せないのはどうしようもない」と、そこで考えるのを止めてしまうか、それとも「人手不足やスキル不足だからこそ少ない人数で業務を平準化し誰でも業務を回せるようにしないといけない」と考えを堀進めていくか、といった意識の違いは少なからずあるのではないかと思います。
辛口な問い② その仕事は本当に必要か?他に遣り様はないのか?
筆者の偏見かもしれませんが、「足し算」は得意だが「引き算」が苦手な管理職や経営層の方が多い印象を受けます。新しいことを考えることに集中し、優れたアイデアを生み出すのですが、一方で新しい優れたアイデアを実現するにあたって、ムリ・ムダ・ムラとなってしまった業務を無くしていく、あるいは自前ではなく外注する等の「引き算」的思考にまで考えが及ばず、業務が加算され続けた結果業務が回らないという現象が各所で発生しているのではないかと想像します。 現行の業務も新しい業務もトータルでみて本当に必要な業務のみを残していくという状態が望ましく、管理職や経営層の方におかれましては是非「引き算」的思考を併せ持っていただきたいと思います。
辛口な問い③ 光陰矢の如し‐どうでもいいこと、非本質的なことになぜ貴重な時間を費やすのか?
上記の内容と似ていますが、企業にもっとも足りないリソースは「時間」だと考えております。限られた時間内に本当に必要な事だけ対応し、残りは不要と割り切らねばならないのに、「取り敢えずこれもやっといて」「これは〇〇さんが必要と言うからよろしく」 「そうは言ってもいろいろあるからさー、一応お願いね」といったムリ・ムラ・ムダ極まりない指示を出してはいないでしょうか。
管理職や経営層の方の本分は、企業が厳しい環境下に晒されても持続的な成長を遂げるよう、ビジネスモデルを常にブラッシュアップし企業価値を継続的に高めていく、 換言すればヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を適時適切に配分し、キャッシュフローの創出能力を可能な限り高めていくことにあるはずです。 そのための手段として自己の管轄下であるスタッフ・担当者の生産性を極限まで高めることが何より重要であるにもかかわらず、上記のような、それが本質的な業務でないかもしれないのに、 部下に適当な指示を出していてはリーダー失格と言わざるを得ません。たとえ相手がワンマン社長であろうが、パワーバランス的に言いにくい取引先だろうが、その他社内外の障壁となる関係者がいようが、是々非々で議論し自己の本分を全うすることです。
まとめ
なぜ業務が回らないのか?に対する筆者なりの結論や問いを、やや辛辣な表現も交えながら書き連ねてみましたが皆様はいかがお考えでしょうか。いつの時代も「企業は人なり」で、どんなに優れたスタッフ・担当者、フレームワーク、ITシステム・サービスが揃っていても、リーダー次第で良くも悪くもなるということをリーダー自身が肝に銘じることが重要と思います。筆者自身、本コラムを書き連ねていく中でハートにグサグサくるものがありましたが、「隗より始めよ」ということで日々の経営・管理・業務に真正面からあたっていきたいと思います。
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。