「EDI 2024年問題」、どうする?

#各論#システム#EDI#POSレジ#ERP#法令・規則
「EDI 2024年問題」、どうする?

今年最後のコラムは「EDI 2024年問題」について取り上げます。 頭の「EDI」をはずして単に「2024年問題」とインターネットで検索すると、物流とITのそれぞれの業界で2024年に何らかのイベントが発生し、業界関係者が対応を迫られていることが見て取れるかと思います。 実は筆者は前職で物流業に携わっており、2024年問題と聞くと真っ先に物流業界における諸問題が惹起され、これまでの経験を滔々と語りたい気持ちが湧いてきます(笑) 当時は来たる「物流クライシス」に対応すべく、社内の人事制度の刷新や荷主との値上げ交渉等の様々な施策を経営企画のマネージャーという立場で立案・実行してきました。 もちろん現職はクラウドERPベンダー、つまり広い意味でIT業界に身を置いていますので、今回は「IT業界における2024年問題」について説明します。

さて、そのIT業界における2024年問題として最も取り上げられているのが、タイトルに冠したEDI 2024年問題となります。なお、ここで「最も」と表現したのはEDI以外にもこの問題によって影響が生じる領域があることを示しています。 EDI 2024年問題については「EDI 2024年問題については「[ウェビナー開催記念] EDIマッピングの利便性と課題について」 で少しだけ触れたのですが、2024年問題の中で特に重要なテーマですので、今回はこの問題にフォーカスして説明していきます。

IT業界の「2024年問題」とは?

NTT東西が2024年に固定電話網のIP化を予定しており、ISDN回線サービス「INSネット」の「デジタル通信モード」を廃止する方針で、2024年1月から段階的にIPに切り替え、2025年1月に完全移行することになっています。 この固定電話網のIP化に伴うISDNの廃止により、後述する企業の業務に影響を与えることが予想されている問題を「2024年問題」と呼んでいます

EDIだけではない「2024年問題」の影響とは?

2024年問題で最も影響を受けるのが卸売業や小売業といった業界です。 こうした業界では、受発注・出荷・納品・請求・支払等の企業間取引を、FAX・メール・電話という手間暇のかかる手段ではなく、電話回線を利用して自動化するシステム、つまりEDI(Electronic Data Interchange;電子データ交換)を使って効率的に処理している場合が多いです。この電話回線を利用したEDIのことを「レガシーEDI」といい、後述するWeb-EDI若しくはインターネットEDIと比較する際によく使われる言葉です。 EDIはリアルタイム性が求められるシステムですが、そのEDIの通信インフラである電話回線はISDN回線です。ただし、2024年問題によって即座にレガシーEDIが使えなくなるわけではなく、経過措置としてISDN回線の代替である「メタルIP回線」上のデータ通信が提供されますが、このメタルIP回線はISDN回線と比較して約4倍の遅延が生じることが公表されており、データ交換に遅れが生じるリスクが指摘されています。したがって、代替回線で従前の通信速度が担保されるわけではないため、早期に抜本的な対応をすべきです。

また、2024年問題はEDI以外にもPOS(Points of Sales;販売時点管理)レジに影響が生じる可能性があります。POSレジは店舗で商品を販売する際、商品をレジでスキャンし本部へデータが送信され、本部は商品の在庫や売上・顧客情報をリアルタイムで把握することができるシステムです。そのPOSレジの一部にISDN回線が使われているため、廃止によってデータの集計ができないことが懸念されています。

「EDI 2024年問題」への対策ポイント

EDI 2024年問題には、従前の電話回線を利用したレガシーEDIからインターネット回線を利用したWeb-EDI若しくはインターネットEDIへの切り替えで対応することができます。Web-EDIは、レガシーEDIと比較して専用回線等EDI環境の準備が不要で、インターネットとパソコンさえあれば手軽に始められるのが特徴です。なお、インターネットEDIはインターネット回線を使う点ではWeb-EDIと同じですが、標準的な通信規約(プロトコル)を用いたEDIを指します。限りある経営資源を有効活用するため、特に中小企業においてはこうしたコストと手間のかからないインターネット回線を利用したEDIの切り替えを早期に検討すべきです。

一方で、EDIの切り替えだけ対応すればこの2024年問題が解決するのかというと必ずしもそうではありません。レガシーEDIを利用している企業では往々にして他のシステムもレガシー化している場合が多く、例えばメインフレームやオフコン等、自社の基幹システム(ERPシステムともいう)そのものがレガシー化しているならば、コストメリットのあるクラウドERP等へ切り替えを検討すべきです(システムの切り替えと同時に、システムに業務を合わせるBPR(Business Process Re-engineering;業務の再構築)に取り組むことができればベター)。

またその際に、販売・購買・生産・在庫・会計といった基幹システムとEDIのデータ連携は企業活動の生命線であることから、EDIの切り替えによって基幹システムとのデータ授受に不具合が生じないかをしっかりと検討しましょう。

まとめ

「2024年問題」、あるいは「EDI 2024年問題」は今すぐにでも対応しなければならない優先度の高い経営課題といえます。「まだまだ先の話では?」と考える方もいると思いますが、いざEDIや基幹システムを切り替えようと動いても、すでに駆け込み需要で対応できるITベンダーやIT人材が不足していて、「時すでに遅し」という事態になりかねません(そもそも我が国のIT人材は慢性的に不足しているのは周知のとおりです)。 一方で、見方を変えると2024年問題はチャンスでもあります。コロナ禍然り、何らかの外圧によって漸く人も会社も社会も変わっていくというのは世の常ですが、そうした「強制イベント」を受動的・消極的に捉えるのではなく、自らを変革し強化する好機と捉え能動的・積極的に今から動いていけば、2022年以降も続くであろうVUCA時代を乗り切ることができると思います。

最後になりましたが、来年も独自のテーマ・切り口でコラムを書いていきますので、皆様におかれましては引き続きお付き合いいただけますと幸いです。よろしくお願いします。それでは、よいお年を。

この記事を書いた人

ライター
株式会社キャム 取締役COO

下川 貴一朗

証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。

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