全部登録という“邪悪”

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全部登録という“邪悪”

ERPに限ったことではありませんが、何かしらのITサービスを使う際には、その導入段階で最もエネルギーを使うことが多いかと思います。 出来ることなら最小のエネルギーでスムーズに導入したいと誰もが思うはずですが、実際には遅々として進まず、時間と労力とお金が垂れ流し…という話をよく耳にします。 どうしてこのようなことが起きるのか?理由は様々ですが、一つには「全部登録という邪悪」が人と組織に根付いている可能性が挙げられます。

今回のコラムは中小企業が挫折する「マスタ登録」という名の鬼門の続編として、「全部登録の邪悪」とは何かについて説明します。

マスタの登録数は十数万件!でも実際使うのは…?

ERPをはじめとしたBtoB向けのITサービスには往々にして「マスタ」という仕訳・計上といったデータ処理の基本となるデータをあらかじめ登録しておく台帳のような仕組みが存在します。 「商品マスタ」「得意先(顧客)マスタ」「仕入先マスタ」等がその例です。

業歴の長い会社では、創業・設立から数えると非常に多くの商品・得意先・仕入先が存在しますが、これら全部をマスタに登録してから導入をスタートさせるケースが多く存在します。 中には「商品マスタ」で十数万件にものぼる膨大な商品データを登録するケースがあるのですが、実際に使用するデータはたったの数百件であることもザラにあります。

こうした「全部登録」によって、ITサービス導入への無駄な労力を発生させているのは誰の目にも明らかなのですが、後述するような理由で人はその“邪悪”からなかなか解放されません。

「いつか使うかも」は永遠に来ない

なぜ人は「全部登録」をしてしまうのか?
それは「いつか使うかも」という一抹の不安からくるものだと推察します。

十数年取引をしていない得意先があったとしても、ひょんなことから取引が再開されるかもと考え、「念のため」に登録しておこうという心理です。 この心理は分からなくはありません。筆者も自宅の部屋の掃除をしていると「いつか着るかも」ということで、奮発して買った10年前の古いジャケットを捨てずに取っておくことがあります。 しかし、そのジャケットに結局袖を通すことはなく、先日ついに決心して燃えるゴミの日にリリースしました。あの時はとてもスッキリした気分になりました(笑)

さて、個人のジャケットと会社の得意先マスタとでは重要性のレベルが違いすぎますが、根本的な問題はあまり変わらないではと考えます。
十数年取引をしていない先から連絡があり、取引が再開される可能性はどのくらいあるのか?可能性はゼロとは言いませんが、永遠に来ないケースの方が圧倒的に多いのではないでしょうか。 そうであればマスタに「全部登録」等せず、例えば過去2-3年内に取引のある先に限定して登録し、残りは削除する思い切りが必要だと思います。 このような思い切り・割り切りがないと絶対にITサービスのスピード導入は実現しません。

「そうは言っても、仮にひょんなことから連絡があり取引が再開されたらどうするのか!」とご心配される方も多くおられると思います。 その時には「新規登録」すればよいだけなのです。十数年前の取引データを後生大事に持っていても、結局は最新のデータに更新を掛けないといけないのですから。 ITサービスの導入も部屋の片づけも「断捨離」が肝要なのです。

「全部登録」は個人情報保護上もリスクが高い

2022年4月1日より改正個人情報保護法が施行されました。
詳細はインターネット検索等で調べて頂きたいのですが、改正により個人の権利保護が強化され、個人情報を取り扱う事業者の責務が追加、法令違反により事業者が負うペナルティも強化されました。

このような潮流を考慮すると、マスタデータの「全部登録」は事業者のリスクを高める余計な作業と言わざるを得ません。 余計なデータは登録せずに除外・抹消・削除し、必要最低限のデータのみ登録しておく。 そうすることで開示請求に対する事務負担や、万が一情報が漏えいした場合の個人情報保護委員会への報告義務、並びに本人への通知義務の負担を軽減する等、会社を守ることにもつながるのです。

まとめ

最後の個人情報保護に関する説明は冒頭の趣旨とやや異なる内容ですが、いずれにしてもデータの全部登録がなぜ“邪悪”なのかはご理解頂けたのではないでしょうか。 全てのデータを洗いざらい盛り込み、100%の準備をもって導入するという考えでは、いつまで経ってもITサービス導入のスピード化は図ることはできません。 「必要最低限」「断捨離」「スモールスタート」という考えが大事です。

最後に宣伝になりますが、2022年5月19日(木)16時より無料ウェビナーを開催します。 今回は実際に弊社クラウドERP「キャムマックス」をスピード導入したユーザー様をゲストにお招きし、弊社代表とのトークセッションをお届けする内容となっております。 どうしてスピード導入できたのか?社内で問題・懸念は生じなかったのか?等のリアルな声が聴ける貴重な回となっておりますので、是非ともお申込下さい。

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この記事を書いた人

ライター
株式会社キャム 取締役COO

下川 貴一朗

証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。

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