[ウェビナー開催記念]ERP導入の成否を分けるポイントとは?
#総論・概論#システム#ERP#経営管理#業務効率化同じERPシステムを導入しても会社によって成否が大きく異なるのは周知の通りですが、面白いことにそれが同業種・同業態で規模もそれほど違いがないのにもかかわらず成功する会社とそうでない会社が事実存在します。
その違いはどこからくるのかについて、これまでのコラムで事あるごとに筆者の考えを説明してきましたが、2022年5月19日(木)に開催したウェビナーに登壇頂いたビッグウイング・亀山様のお話を伺ったことで、 ユーザならではのお考えを窺い知ることができ、自身の考えをバージョンアップすることができました。
ということで今回は、ウェビナーの内容を踏まえERP導入の成否を分けるポイントを3つに絞って説明していきます。 なお、このポイントはERP導入に限らずビジネス全般でも重要だと考えておりますので、ビジネス思考の整理としてご一読頂ければ幸いです。
「完璧主義」か「適当主義」か
「自分達が一番解決したい課題はどこか?に焦点をあて、そこが解決できるのであれば他の部分で多少のロスが生じることは致し方ないと割り切る―」という、 ある意味での「適当主義」はERP等のITサービスを導入する上で特に欠かせない思考です。
もちろん、その「多少のロス」が具体的にどの程度のインパクトを与えるかは事前にしっかりと調べる必要がありますが、 調べた結果与える(負の)インパクトが僅少であるにもかかわらず、全体のベネフィットを考えずに一部を切り取り、そこに固執していてはいつまで経っても事は前進しないことは想像に難くないでしょう。
こうした「完璧主義」を全て否定するつもりはないですが、目まぐるしく変化する社内外の環境に即応することが昨今のビジネスの成否や巧拙を分けるといっても過言ではありません。 したがって、少なくとも全体最適が求められるERP等のITサービスの導入においては、事がいつまで経っても進まない「完璧主義」は「適当主義」に切り替えるべきです。
トップの確固たるポリシーと最低限のリテラシーの有無
ERP等のITサービスを導入する過程の中で、あるいは導入した後で当初想定しなかった問題・課題・リスクが必ずと言ってよい程発生します。
そのような事象が発生すると、方々から大小さまざまな意見が経営層やプロジェクトの責任者等のトップに寄せられますが、当初の目的を達成できている、 あるいは達成できる可能性が高いままであれば、ここで日和らずに確固たるポリシーをもって現場を指揮・統率していくトップの存在は非常に重要です。
また、同時に当初の目的を達成できている、あるいは達成できる可能性があるか否かを推し量るだけの最低限のリテラシーをトップが持っていなければその判断はできません。 現場任せではなく自ら率先して現場とコミュニケーションを取り、絶えずインプットとアウトプットを繰り返していく一本筋の入ったトップが居るか否かで導入の成否は大きく左右されます。
現場のキーマンを巻き込めているか否か
勤続年数が長い方、業務を熟知している方、人・組織をまとめることに長けている方、成績がずば抜けて良い方等、どの部門にも必ずキーマンと呼ばれる方がいます。
ERPは多く部門が関係するITサービスである以上様々なステークホルダーが登場しますが、キーマンを当初から巻き込めているか否かは上記2点と同じかそれ以上に重要です。
基本的に彼らの賛同がなければ導入は上手くいくどころか却ってトップに対する心象を悪化させ、最悪の場合それがトリガーとなってビジネスそのものの屋台骨を揺るがしかねません。
だからといって、こういう時だけトップが彼らに擦り寄っても彼らからはその魂胆が見透かされて逆効果となります。常日頃から彼らが如何に現場を動かしているかをウォッチし、 彼らに対して心からのリスペクトがあるコミュニケーションを取ってはじめて、こうした会社を挙げた一大事に活きてくるのです。
まとめ
聞く人が聞けば当たり前のことばかりかもしれませんが、実行できている方はそう多くはないでしょう。なぜなら世の中の大半の会社はERP等のITサービスの導入にことごとく失敗しているのですから。
今回は特に極めて抽象度の高い内容ではありますが、テクニカルなポイントを押さえるよりも先ずはこうした意識レベルから押さえていくことが何より大事であると、ウェビナーに参加して心底思いました。
筆者自身は執筆時点でマーケティング部門の責任者をしておりますが、上記3つのポイントをいつまでも忘れないよう、肝に銘じて業務にあたっていきたいと思います。
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。