飲食店の棚卸を毎月、正確に行う手法を解説
毎月の棚卸は、飲食店の経営において非常に重要な役割を果たしますが、棚卸作業は正確性を求められる上、手間やコストのかかる作業です。
こちらの記事では、毎月行うことが推奨される飲食店の棚卸について、その目的や実施する際に覚えておきたいポイント、正確に行うための具体的な手法をわかりやすく解説しています。
目次
飲食店が棚卸を行う理由
原価率を把握する
飲食店が棚卸を行う重要な理由の一つは、原価率を把握することにあります。
・原価率(%) = 売上原価(原材料費などを含む製造原価) ÷ 売上 × 100
原価率は、売上原価と売上のバランスを示す指標で、飲食店の収益性を判断するために非常に重要です。
定期的な棚卸を通じて、店内の食材や商品の実際の在庫と、それにかかる費用を正確に計算することで、正確な原価率を計算できます。
一般的に、飲食店では原価率が30%前後であることが理想的とされています。
売上総利益(粗利益)の計算式
売上総利益(粗利益)は、飲食店の収益性を評価するための重要な数字で、以下の計算式で求められます。
・売上総利益(粗利益) = 売上 - 売上原価
棚卸を通じて得られる正確な在庫情報は、売上原価を構成する原材料費の計算に不可欠であり、これにより正確な売上総利益が算出できます。
棚卸は在庫管理を効率的にする面でも大いに役立ちます。
在庫管理の改善と原価率の最適化
在庫が適切に管理されていない場合、余分な食材を仕入れてしまう可能性があり、これが原材料費の増加に繋がることがあります。
定期的な棚卸を通じて、正確な在庫状況を把握することで、仕入の計画をより効果的に立て無駄な費用を減らすことができます。
また、原価率の最適化は飲食店経営において極めて重要であり、棚卸によって得られる在庫データは、原価率を適切に管理し経営の健全性を維持するために欠かせません。
最終仕入原価法と移動平均法について
飲食店の棚卸において、原材料を算出する在庫評価方法として「最終仕入原価法」の他に「移動平均法」などいくつかの計算方法があります。
最終仕入原価法は、在庫品の単価を最後に仕入れた価格を基に評価する方法で計算がシンプルで、価格変動が比較的少ない場合に適しています。
対照的に、移動平均法は在庫品の平均仕入価格を計算しそれを基に在庫を評価する方法で、こちらは価格変動が頻繁に起こる場合に適しており、より現実的な在庫単価を算出することができます。
なお、最終仕入原価法以外の計算方法を適用させる場合には所轄の税務署に届出書を提出する必要があり、一度決定した方法は継続することが前提となりますが、変更する場合には期日までに所定の申請書を所轄の税務署に提出する必要があります。
食材ロスの軽減とコスト削減
棚卸の目的の一つには、食材の無駄を減らし、ロスを軽減することが挙げられます。
日々の営業で使用する食材の量を正確に把握し、過剰な仕入を避けることが非常に重要です。
そこで定期的に棚卸を実施することにより、余剰となっている食材や不足している食材を明確にし、次回の仕入計画を最適化します。
これにより、不必要な在庫を削減し食材の廃棄を抑えることができます。
その結果、食材コストの削減に寄与し店舗の利益率向上につながります。
棚卸を実施するためのポイント
在庫カウントの方法について
食材の在庫カウントは正確な棚卸を行う上で極めて重要であり、方法としては大きく2つあります。
- 物理的なカウント(実際に在庫を数える方法)
- システムを使ったカウント(在庫管理システムを活用する方法)
物理的なカウントは、特に小規模な飲食店や手作業が主体の場合に適しています。
一方、システムによるカウントは在庫の動きが複雑で、多くの食材やメニューを扱う大規模な飲食店に向いています。
マニュアルをしっかりと作成する
飲食店における棚卸マニュアルの作成は、正確な在庫管理をするために非常に重要です。以下に、マニュアル作成のポイントを解説します。
範囲の明確化
棚卸の対象となるアイテム(食材、飲料、消耗品など)を明確に定義します。
棚卸プロセスの説明
在庫のカウント手順を細かく記述します。どのアイテムから始めるか、どのように数えるか(重量、個数など)を具体的に説明しましょう。
また、在庫の記録方法を指定し使用するフォームやシステム、記録すべき情報(数量、賞味期限など)を指示します。
頻度とタイミング
棚卸を行う頻度(例: 月末、四半期ごとなど)を定義し、具体的な日時や時間帯を明確にしておきましょう。
特別な留意事項
特別な取り扱いが必要なアイテム(例: 高価な食材、消費期限の短い食材)があれば、それに関する指示を明記します。
また、在庫の不一致や腐敗などの問題が発生した場合の対処方法もあわせて説明しておくことも大切です。
飲食店の棚卸はどこまですべきか?
飲食店における棚卸は、店内にあるすべての在庫を対象に行うべきです。
これには、食材、飲料、調味料、消耗品(例えばナプキンや包装資材)、さらには調理器具や食器なども含まれます。
特に食材に関しては、賞味期限や鮮度が重要なため、定期的なチェックが必要です。
在庫を正確に把握することは、原価管理、廃棄の最小化、税務上の正確な報告のために不可欠です。
飲食店で使えるわかりやすい棚卸表の作り方
棚卸表を作成するためには、まずはどのような情報を記録するかを決める必要があります。
飲食店で必要とされる基本的な項目を考慮し、Excelなどのスプレッドシートを使用して編集できる形式で棚卸表のテンプレートを作成します。
以下に、飲食店での使用に適した棚卸表の基本的な構成を並べてみました。
棚卸表のテンプレート構成
- 品目:食材や商品の名称を記載します。
- カテゴリ:食材の種類(例:肉類、野菜、乾物、飲料など)で分類します。
- 単位:数量の単位を記載します(例:kg、g、個、リットルなど)。
- 在庫数:実際の在庫数量を記載します。
- 単価:商品ごとの単価を記載します。
- 合計金額:在庫数と単価を乗じた金額を記載します。これにより、在庫の総額を把握できます。
- 賞味期限/消費期限:食品の場合、賞味期限や消費期限を記載して品質管理を行います。
- 備考:特記事項や確認が必要な情報を記載します。
Excelでの棚卸表作成手順
- Excelを開き、新しいシートを作成します。
- 上記の項目を列の見出しとして1行目に入力します。
- 各列に対応する情報を入力するためのセルを用意します。
- 「合計金額」列には、自動で計算されるように数式(=在庫数 * 単価)を設定します。
複数のカテゴリや品目がある場合は、その数の分だけ行を増やし情報を入力していきます。
全ての在庫が入力された後、在庫数や合計金額を集計する行を設けて、全体の在庫状況を把握できるようにしましょう。
確定申告に影響を与える期首・期末棚卸高
確定申告では、期首と期末の在庫額を明確にしなくてはなりません。
期首の在庫額(期首棚卸高)と期末の在庫額(期末棚卸高)を正確に把握することで、その期間の売上原価を計算し、事業の正確な利益を算出しましょう。
ちなみに、確定申告の勘定科目にある「期末商品棚卸高(期末棚卸高)」に記載する金額は、売上原価から控除されその年の経費にはならないので注意が必要です。
棚卸表は保管しておく
棚卸表は確定申告書に添付する必要はありませんが、領収書などと同じように保管義務があります。
棚卸表は売上原価や利益の計算根拠を示す重要な証拠資料です。
棚卸表がないと、申告した数値の正確性を証明するのが困難になり、税務調査があった際に問題が生じる場合があります。
保管期間は青色申告で7年、白色申告で5年、株式会社等の場合は10年間保存しておくよう義務付けられています。
飲食店の棚卸を正確に行う方法
目視によるチェックや、大型店舗の場合は手動によるチェックには限界があります。
特に毎月の棚卸となれば人件費や時間コストがさらにかかります。
こうしたことから、在庫管理システムなどを活用する方法が効果的です。
アプリやIoT技術を活用した棚卸
スマートフォンやタブレットを活用して、専用の在庫管理アプリを使用し棚卸プロセスを効率化できます。
商品や食材のバーコードスキャンにより、数量の入力や在庫情報のリアルタイム更新が容易に行えます。
また、デジタル処理することによりデータの正確性を確保し、計算ミスを減少させます。
その他、IoT(インターネット・オブ・シングス)デバイスを使用することで重量などから在庫量を自動的に計測することも可能です。
クラウドERP「キャムマックス」は飲食店の棚卸としても使える
キャムマックスでは、在庫管理機能の一つに棚卸機能があります。
コチラの機能は飲食店はもちろん、どのような業種業態でも使えるよう汎用性のある仕様になっています。
棚卸をアナログで行っているため、管理が煩雑になってしまって無駄な仕入れなどが発生していてお困りの場合でしたら一度キャムマックスをご利用ください。
棚卸データ作成
棚卸記入票印刷
棚卸入力
棚卸明細表
棚卸承認
棚卸以外の機能も充実
この記事を書いた人
下川 貴一朗
証券会社、外資・内資系コンサルティングファーム、プライベート・エクイティ・ファンドを経て、2020年10月より取締役CFOとして参画。 マーケティング・営業活動強化のため新たにマーケティング部門を設立し、自ら責任者として精力的に活動している。